江戸時代初期から京都の中心に位置する錦市場の八百屋では、常に番頭や奉公人とひと味ちがうもんを作らんと、と頑張っておりいち早く、グリーンピースの瓶入りを売り出したり、手先の器用な丁稚は、競って細工野菜を老舗料亭におさめ、新しいもの好きの当主は、イギリス製の新型の大きなカゴ付き自転車で野菜を配達したりと励んでおりました。そんな頃、但馬出の番頭の佳長は、九条ねぎがよく出来るので、自分の出身地の日本海の海の幸の海老とを合わせ、九条ねぎ入りせんべいを仕立てました。京の幸との出会い物。これぞひと味違うものづくり。これが、当主の川内屋常吉に大変喜ばれ、カラッと粋な一品となりました。
店主啓白
「えび煎餅」の特徴は、「時」を贅沢に費やして、素材本来の風味を醸し出しているところにあります。
乾燥させた約12トンの「えび殻」と発酵させた「竹の粉」を沖縄産泡盛のもろみ酢の絞り汁でブレンドした天然の肥料を使い、米作りに適した自家農園「佳長ファーム」の土壌を作っています。安心安全な自然農法で栽培されたお米は、一粒一粒無駄にすることなく、えび煎餅の原料として使われています。
主原料のえびは、東シナ海で春先に取れた鷹爪えびで、殻は堅く身には甘みがあります。その「えびの身」をゆっくりとペースト状に加工していくと、ほんのりと桜色を呈してまいります。赤ちゃんのほっぺたのように。この割合を何度も研究し、突き詰めてまいりました。佳長のえび煎餅は、素材本来の風味を醸し出すために、多大な時間を費やしているのです。
一般のえびせんと風味、食感が異なるのは、えびを贅沢に使用していることと、非常識なほどに「時」を費やしていることにあります。人の手で作られるえび煎餅。もの作りの原点は親心から。佳長のえび煎餅は、工程それぞれに人が関わっています。一枚一枚を確かな目で職人が丁寧に焼き上げています。
九条葱には他の葱にはないぬめりが存在し、このぬめりに香りと甘さが凝縮されています。季節とともに葱の様子や味も移り変わり、春はやわらかく、夏から秋はピリッと辛味が楽しめます。また旬は1月から2月の寒い時期で、この時期には九条葱特有の「ぬめり」があり一層甘みが増します。
京都の夏の風物詩「鱧(はも)」をふんわり天ぷら風に仕上げ、おせんべいには紀州の梅をあしらいました。
老舗の伝統に現代の感性を加え進化を続ける料理屋 八坂圓堂が監修する「京野菜天ぷらせんべい」
潮香ただよう和のこころ。天然えびの豊かな香りと、深い味わいをそのまま活かした本格派えびせんべい。十一日間もの時を経て熟成される本格派えびせん。贅沢な風味をお楽しみ下さい。